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東京高等裁判所 昭和25年(う)1044号 判決

控訴人 被告人 篠原惟介

弁護人 大浜勝三 長谷川光

検察官 田辺緑朗関与

主文

本件控訴はこれを棄却する。

当審における訴訟費用(国選弁護人に支給したもの)は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人長谷川光、同大浜勝三の控訴趣意は、それぞれ同弁護人名義の控訴趣意書の通りであるから、これを引用する。これに対し、当裁判所は左の通り判断する。

弁護人大浜勝三の控訴趣意(訴訟手続の法令違反)

原判決が証拠の標目として、沢江栄一の検察官に対する弁解録取書及び供述調書中の各供述記載を挙げていること、沢江栄一は原審における相被告人であつたのであるが、少年法第二条の少年であつて、検察官が家庭裁判所に事件を送致することなく直接に原審裁判所に起訴し、公訴提起手続に違法の点があつたので、原審において、公訴提起を無効として昭和二十五年二月九日公訴棄却の裁判をしたものであることはいずれも所論の通りであるが、公訴提起手続の無効は直ちに当該事件の捜査の段階において作成せられた弁解録取書、供述調書その他の証拠書類又は審理の過程において作成された公判調書その他の証拠書類の無効を来すことはないものと解すべきであるから(刑事訴訟法第十三条管轄違の訴訟手続の効力参照)、その無効を前提とする所論は失当である。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 谷中董 判事 中村匡三 判事 真野英一)

弁護人大浜勝三の控訴趣意

原判決は訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れないものと信ずる

原審記録によれば本件犯罪事実の共同被告人沢江栄一に対し同人は昭和七年九月十六日生で十八歳未満の少年と認定し少年法所定の検察官の家庭裁判所送致手続なしに直接公訴を提起したため刑事訴訟法第三百三十八条第四号違反の無効のものとし公訴棄却の判決を言渡して居る従つて訴訟手続は公訴提起当時に遡及して効力を失い無効な訴訟手続の下になされたものとして同人の検察官に対する供述調書も証拠能力なく訴訟関係人の同意があつても証拠に供し得ない無効なものと謂はざるを得ない然るに共同被告人篠原惟介に対する原審判決書は証拠として右共同被告人沢江栄一の検察官に対する弁解、供述調書の供述記載を証拠の標目に掲げて採証し断罪の資に供して居る従つて証拠能力のない無効な書面の供述記載を証拠として採用する違法がありその違法が判決に影響を及ぼしていることが明らかであるから該判決は破棄を免れないと信ずる

(その他控訴趣意は省略する。)

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